PLEX PROGRAM REPORTプレックスプログラムレポート

テーマ:「課題解決から可能性創造へ」

株式会社EVERY DAY IS THE DAY 共同代表/クリエイティブディレクター

佐藤 夏生 氏Natsuo Sato

PROFILE
博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクター、HAKUHODO THE DAYのCEOを経て、2017年、ブランドエンジニアリングスタジオEVERY DAY IS THE DAYを立ち上げる。adidas、NIKE、Mercedes-Benzといったグローバルブランドのクリエイティブディレクターを歴任。近年は、TOYOTAの事業戦略やdocomoのダイバーシティCSRの立ち上げ、霧島酒造のビール事業戦略、ZOZOアプリWEARの開発、渋谷区の都市デザイン等、クリエイティブワークを拡張している。GOOD DESIGN賞をはじめ、ACCマーケティングエフェクティブネスグランプリ等、国内外で数々の賞を受賞。2018年から、渋谷区のフューチャーデザイナー、横浜市立大学先端医科学研究センターのエグゼクティブアドバイザーを務める。東京デザインプレックス研究所プレックスプログラム登壇。

第1部:講義「課題解決から可能性創造へ」

講義1

今回のプログラムは、佐藤夏生さんにお越しいただきました。記念すべき、プレックスプログラム2020年の1発目を飾っていただきます。佐藤さんは、(株)EVERY DAY IS THE DAYの共同CEO で、クリエイティブディレクターとして大変活躍されています。本日は佐藤さんがとても大切にしている考え方、「課題解決から可能性創造へ」をテーマにお話しいただきました。佐藤さんの言葉1つ1つに重みや新しい発見があり、生徒たちの眼差しもまさに真剣そのものでした。

講義2

本日のテーマ「課題解決から可能性創造へ」の「課題」と「可能性」とは一体何でしょうか。佐藤さんは課題と可能性の違いについて、「課題とは、共有しやすく納得感があるもので、一方の可能性とは共有できないものです。そのため、必然的にチームや企業での仕事になると、課題に目がいきます。しかし、課題より可能性の方がはるかに大きく、可能性を自分でいかに大切に育てていくかが大事なのです。」と語ります。つまり、「可能性というまだ無いものを形にすることこそが、クリエイティブでありデザインである。」ということです。

講義3

佐藤さんは、クリエイティブの仕事の苦労とやりがいを次のように話します。「IDEA(=自分の中から紡ぎ出す物語ではなく、社会現象そのもの)を考える時、人が思いつかないことを生み出すのに簡単なはずがなく、そういう意味では、辛くて理解されないことは当たり前です。なぜなら、社会に無いものがすらすらと通るはずがないからです。しかしIDEAが通った時に、これほど個人が社会に対して影響力を持てる仕事はそうそうありません。この仕事において一番大事なのは、センスでもキャリアでもなくて、IDEA に『体重を乗せる』ことだと思います。」

講義4

そして、良いアイデアを絶対的に生む3つの方法「1.ひたすら数を考えること、2.その中から良い案を深掘りすること、3. チームでアイデアを発展させること」を教えていただきました。特に方法1については、絶対的にアイデアを生む力を上げたい場合、「1つの宿題に対して常に100案考える」ことを勧めており、その理由は自分の視点を横に広げ、「良さげな案」と「イマイチな案」の物差しを作るためだと続けます。最後に、佐藤さんはクリエイティブな仕事を行う上で、変わりゆく社会の中で「TIDE(=潮目)」に気づき、未来を生み出すことが大切と語ります。佐藤さん、貴重なお話をありがとうございました。

質疑応答1

今回は特別に、普段のワークショップではなく、佐藤さんへの質問タイムです。このような機会は本当に貴重なので、学生が必死に佐藤さんの言葉をメモしながら、視線を向け、耳を傾けている姿が印象的でした。「Q. 学生の質問」「A. 佐藤さんの回答」の順番でいくつかご紹介していきたいと思います。Q1. 人と物との関係の変化のヒントをどこから得ているのか。A1. 時代によって何が「良い」とされるかは変化していく。ビジネス視点でいうと、「朝令暮改」「矛盾」「一貫性ない」という言葉は、「良い意味」になる時代なので、普段から常識を疑いながら頭を使って生活していくことが大切。

質疑応答2

Q2.「課題解決から可能性創造へ」ということで、「可能性」は他人に共有して共感してもらうことが必要だと思うが、普段から気をつけているものはあるか。A2. 講義で話した「TIDE(= 潮目)」を普段から読んでいるか、また「HATE(=違和感)」を大切にすることによって、自分のクリエーションの方向性を築いていくことをしている。Q3. ダイバーシティをどのように感じるか。A3.ダイバーシティとは「思いやり」ではなく、「自分とは違う価値観があって良いと思えて、それでも社会が上手く進んでいこうとすること」だと思う。つまり、自分とは違うものが共存して良いという感覚を見つけ、言語化していくことが大事かもしれない。

質疑応答3

Q4. 今の時代は自分の見たい情報しか見ることができないということが起きやすいと思うが、普段佐藤さんはどのようなところから情報を得ているのか。A4. 特殊なものは見ていないものの、見ているものに対しての気づき方は異なると思う。例えば、モナカ食べるにしても、どこの小豆使っているかを見ているなど、同じ情報量でも切り取り方が違う。Q5.グローバライゼーションについて、どのように考えているか。A5. 経済はグローバル化するけど、カルチャーは閉じることでできるものと思う。グローバルとは、再現性が高いもので、再現性が低いものの方がグローバルから見て、独自の価値になる。そのため、再現性の低いものを大切にしていきたい。以上で質問タイムは終了です。前半の佐藤さんの言葉を深掘りするような質問が多かったです。

総評

最後に佐藤さんから締めのお言葉をいただきました。「クリエイティブの仕事は、自分の生き様が投影できる珍しい仕事であり、投影するのに逃げてはダメで、投影するということは、デザインしていない時間もデザインに影響を与えているのです。つまり、何を考えてどう生きているのかということも、デザインに投影されるので、デザインだけ上手くなろうというのは絶対無理で、全人格に体重乗っけてやる仕事だと思います。だからこそものすごく大変な仕事だけど、やっぱり価値があると思いますし、上手くいった時の喜びは、仕事が褒められている=自分が褒められていることと一緒なので、そういう仕事だと思って、体重乗っけて逃げずにやって欲しいなと思います。」